不動産の業務をするうえで役に立つ資格の取得といえば宅建士の資格がありますが、その他にも不動産鑑定士という資格があります。
今回は不動産鑑定士の資格の難易度について解説をさせていただきます。
この記事は
不動産鑑定士の試験を受験したい人向けに難易度と必要な勉強について紹介します。
目次
不動産鑑定士の難易度について
不動産鑑定士の難易度は日本の中でトップクラスに取得するのが難しい難易度です。
不動産鑑定士は日本の3大難関資格の一つ
不動産鑑定士の難易度は不動産関連の資格で最も取得するのが難しいと言われる資格です。
日本の難関資格として、司法試験、公認会計士と不動産鑑定士は同等に位置をしています。
論文式試験の難易度が非常に高く、合格をするために受験予備校に通う方も非常に多いのが特徴となります。
合格率の推移
不動産鑑定士の試験は2つの試験に分けられていて、短答式試験と論文式試験があります。
この2つの合格率について見ていきましょう。
短答式試験の合格率の推移
- 2015年の合格率:30.6%
- 2016年の合格率:32.6%
- 2017年の合格率:32.5%
- 2018年の合格率:33.4%
- 2019年の合格率:32.4%
- 2020年の合格率:33.1%
- 2021年の合格率:不明
合格率の推移としては上記のようになり、年々合格率は上がっている傾向にあります。ただこの30%代の合格率が高いのか低いのかがわかりにくくはあります。
ちなみに宅建士の資格だと15%前後となっています。
日本でも最も難しい部類に入る不動産宅建士ではありますが、この合格率は短答式試験の試験となりこのあとに論文式の試験を受けるとさらに合格率は下がります。
この短答式試験に合格すると、論文式試験で落ちたとしても次回移行3年間免除がされます。
論文式試験の合格率推移
- 2015年の合格率:14.2%
- 2016年の合格率:14.5%
- 2017年の合格率:14.5%
- 2018年の合格率:14.8%
- 2019年の合格率:14.9%
- 2020年の合格率:17.7%
- 2021年の合格率:不明
論文試験の合格率は15%前後を推移し受験した上位15%前後以内の特典をとることが合格のラインとなることがわかります。
不動産鑑定士は合格ラインが決まっておらず、相対試験であるというのも特徴の一つです。
実務修習(修了考査合格率の推移)
- 平成20年(第1回):81.8%
- 平成21年(第2回):87.0%
- 平成22年(第3回):93.8%
- 平成23年(第4回):88.2%
- 平成24年(第5回):89.3%
- 平成25年(第6回):88.6%
- 平成26年(第7回):87.7%
- 平成27年(第8回):91.9%
- 平成28年(第9回):86.0%
- 平成29年(第10回):82.5%
- 平成30年(第11回):88.4%
- 平成31年(第12回):72.8%
- (一号再考査):64.7%
- 令和2年(第13回):83.2%
- (一号再考査):47.4%
- 令和3年(第14回):72.4%
- (一号再考査):67.6%
参考文献:監修日本不動産鑑定協会 編著 調査研究委員会鑑定評価理論研究会『新・要説不動産鑑定評価基準』 住宅新報社 2010年 ISBN 9784789232296 pp. 28-40他
実務修習になると80%以上の確率で合格はすることができます。そのためここまで受かったなら、辞退などよっぽどのことがない限りは合格はすることができるということがわかります。
合格者の年齢について
修了考査まで合格する方の年齢はの幅は非常に広くなります。
合格者の平均年齢は30歳~40歳
最年少の合格者の方の年齢は22歳となり
最高年齢の方は82歳となります。
- 平成20年(第1回):合格者年齢:35.6歳 最年少年:23歳 最高齢:70歳
- 平成21年(第2回):合格者年齢:36.7歳 最年少年:23歳 最高齢:72歳
- 平成22年(第3回):合格者年齢:37.2歳 最年少年:24歳 最高齢:75歳
- 平成23年(第4回):合格者年齢:38.5歳 最年少年:24歳 最高齢:82歳
- 平成24年(第5回):合格者年齢:39.4歳 最年少年:24歳 最高齢:79歳
- 平成25年(第6回):合格者年齢:37.6歳 最年少年:24歳 最高齢:69歳
- 平成26年(第7回):合格者年齢:38.1歳 最年少年:24歳 最高齢:67歳
- 平成27年(第8回):合格者年齢:38.9歳 最年少年:25歳 最高齢:67歳
- 平成28年(第9回):合格者年齢:36.8歳 最年少年:25歳 最高齢:62歳
- 平成29年(第10回):合格者年齢:39.3歳 最年少年:23歳 最高齢:66歳
- 平成30年(第11回):合格者年齢:39.5歳 最年少年:23歳 最高齢:66歳
- 平成31年(第12回):合格者年齢:37.4歳 最年少年:24歳 最高齢:72歳
- 令和2年(第13回):合格者年齢:38.5歳 最年少年:23歳 最高齢:64歳
- 令和3年(第14回):合格者年齢:37.7歳 最年少年:22歳 最高齢:70歳
傾向として、年々合格者の平均年齢は徐々に上がり始め30代後半で推移をしている形となります。
年齢別合格率
令和2年不動産鑑定士論文式試験
男性:116名 女性19名
年齢 平均32.6歳 最高齢:61歳 最年少:20歳
合格者の属性等について
30歳未満 受験者数146名 合格者数53名 合格率36.3%
30歳以上35歳未満 受験者数137名 合格者数37名 合格率27.0%
35歳以上40歳未満 受験者数122名 合格者数23名 合格率18.9%
40歳以上45歳未満 受験者数91名 合格者数9名 合格率9.9%
45歳以上50歳未満 受験者数85名 合格者数7名 合格率8.2%
50歳以上55歳未満 受験者数69名 合格者数2名 合格率2.9%
55歳以上60歳未満 受験者数51名 合格者数3名 合格率5.9%
60歳以上 受験者数63名 合格者数1名 1.6%
合 計 764名 合格者数135名 合格率17.7%
年齢の傾向としては、年齢が若いほうが合格率が高い傾向にあります。
理由としては、若い年代の人のほうがまとまった時間をかけて勉強をする時間がある傾向にあることが合格率が高い要因となるでしょう。また不動産鑑定士の試験は論述試験で暗記力が非常に重要な試験になるため若い方が有利になる傾向にもあります。
合格点のライン
短答式試験の合格点のライン
- 2015年の合格得点:140点(200点満点中)
- 2016年の合格得点:128点(200点満点中)
- 2017年の合格得点:135点(200点満点中)
- 2018年の合格得点:138点(200点満点中)
- 2019年の合格得点:140点(200点満点中)
- 2020年の合格得点:133点(200点満点中)
- 2021年の合格得点:不明
合格点のラインとして200点満点中140点以上の得点が合格ラインとなり70%前後の正答率が必要となります。
短答式試験の平均点
- 2015年の合格得点:119点(200点満点中)
- 2016年の合格得点:109点(200点満点中)
- 2017年の合格得点:117点(200点満点中)
- 2018年の合格得点:122点(200点満点中)
- 2019年の合格得点:122点(200点満点中)
- 2020年の合格得点:118点(200点満点中)
- 2021年の合格得点:不明
論文式試験の合格点のライン
- 2015年の合格得点:378点(600点満点中)
- 2016年の合格得点:348点(600点満点中)
- 2017年の合格得点:347点(600点満点中)
- 2018年の合格得点:376点(600点満点中)
- 2019年の合格得点:353点(600点満点中)
- 2020年の合格得点:380点(600点満点中)
- 2021年の合格得点:不明
合格点のラインとして350点以上の得点を獲得する必要があり、正答率として70%前後が求められています。
論文式試験の平均点
- 2015年の合格得点:276点(600点満点中)
- 2016年の合格得点:250点(600点満点中)
- 2017年の合格得点:249点(600点満点中)
- 2018年の合格得点:266点(600点満点中)
- 2019年の合格得点:244点(600点満点中)
- 2020年の合格得点:281点(600点満点中)
- 2021年の合格得点:不明
合格点と平均点は100点以上離れていて、論文式のテストのため論文に書きなれていない人とか書きなれている人で差がでやすくなっています。
知識を正しいか間違いか判断するのは暗記だけでどうにかなりますが、なにもない白紙の答案用紙に自分の知識を書き出すにはトレーニングをする必要があます。
その他にも試験範囲が論文式は広いためすべての科目を網羅している必要があり、鑑定理論・民法・経済学・会計学とむすびつきにく知識のインプットに時間がかかるというのも得点差が開いてしまう特徴となります。
受験者数と合格者数の推移
年度 | 受験者 | 短答式合格者数 | 論文式試験合格者数 | 修了考査合格数 |
2006(平成18年) | 4,605名 | 1,160名 | 94名 | – |
2007 (平成19年) | 3,519名 | 846名 | 120名 | – |
2008 (平成20年) | 3,002名 | 678名 | 132名 | 269名 |
2009 (平成21年) | 2,835名 | 752名 | 124名 | 261名 |
2010 (平成22年) | 2,600名 | 705名 | 106名 | 212名 |
2011 (平成23年) | 2,171名 | 601名 | 117名 | 246名 |
2012 (平成24年) | 2,003名 | 616名 | 104名 | 208名 |
2013 (平成25年) | 1,827名 | 532名 | 98名 | 156名 |
2014 (平成26年) | 1,527名 | 461名 | 84名 | 128名 |
2015 (平成27年) | 1,473名 | 451名 | 100名 | 136名 |
2016 (平成28年) | 1,568名 | 511名 | 103名 | 98名 |
2017 (平成29年) | 1,613名 | 524名 | 106名 | 104名 |
2018 (平成30年) | 1,751名 | 584名 | 117名 | 107名 |
2019(令和元)年 | 1,767名 | 573名 | 121名 | 91名 |
2020(令和2)年 | 1,415名 | 468名 | 135名 | 119名 |
2021(令和3)年 | 1,709名 | 621名 | ー | 105名 |
不動産鑑定士の修了考査合格数としては近年だと平均して100人前後が新しく不動産鑑定士のの資格を習得することができるという結果となっています。
不動産鑑定士の人数
不動産鑑定士の人数として平成29年の時点で9,532人と発表がされています。
不動産鑑定士等の登録者数 9,532名 (不動産鑑定士 8,268名、不動産鑑定士補 1,264名)
不動産鑑定士・鑑定業者の現状
○ 不動産鑑定業者の登録業者数 3,311業者(大臣登録業者 81業者、知事登録業者 3,230業者)
(平成29年1月1日時点)
不動産鑑定士試験の内容について
不動産鑑定士の試験は全部で3つの試験があり、この3つをすべて合格する必要があります。
短答式試験内容
短答式試験は
「不動産に関する行政法規」と「不動産鑑定評価に関する理論」
この2つが試験科目となり、各100点満点、合計200点のテスト形式になります。
前述した通り短答式試験の合格率はおおよそ30%程度になり、合格ラインとしては正答率70%を目標となります。
受験資格は年齢や学歴、性別、国籍関係なく受援をすることができます。
ポイントとしてはこの試験に合格をした三ヶ月後に論文式試験の実施があります。短答式の試験が終わってから論文式試験の準備をするのは現実的ではないため、論文式試験の勉強と同時進行をする必要があります。
人によっては論文式式試験は来年用にと分けて受験をするといった人もいるほどに論文式試験は難問となるため論文式試験を見据えて短答式試験の受験をしましょう。
科目
不動産に関する行政法規(満点 100 点)
令和3年不動産鑑定士試験短答式試験の結果について
平均点 54.3 点
・不動産の鑑定評価に関する理論(満点 100 点)
平均点 69.6 点
出題形式
マークシート方式となり五択式一式です
試験日
年に1回の試験となり、毎年5月の中旬頃に試験が実施されます
論文式試験内容
短答式試験が合格することで受験することができる、論文式試験ですが
この試験が不動産鑑定士になるために一番難しいとされるポイントの試験内容です。
試験範囲も非常に広く短答式試験の何倍も難しいというのが特徴です。
合格率としては14%前後となり正答率も70%前後が求められます。
ポイントとしては試験範囲が非常に広く、足切りがあるため各科目で水準を満たしていないと不合格になります。そのためすべての科目をまんべんなく得点ができるように勉強をする必要があります。
科目
参考サイト:令和2年不動産鑑定士試験論文式試験の結果について
・民 法(配点100)
平均点 52.0 点
・経済学(配点100)
平均点 57.1 点
・会計学(配点100)
平均点 53.1 点
・不動産の鑑定評価に関する理論(配点300)
平均点 118.1 点
不動産の鑑定評価に関する理論(配点300)となっていますが
演習問題の二問で100点、論文問題で200点と分かれています。
出題形式
記述式
試験日
年に1回の試験で毎年8月上旬頃に試験が行われます。
実務修習
最後の試験として実務修習試験があり、この試験では指導鑑定士に指導をされながら、鑑定評価報告書の作成を行う試験になります。
この試験の合格率は8割以上の合格率となっていて不動産鑑定士になるための最難関が論文式の試験であるということがわかりますね。
不動産鑑定士になりたいという方、もっと詳しく知りたいという方は下記をご参考にしてください。
必要な勉強時間
短答式試験:1000時間前後
論文式試験:2000時間前後
個人差はありますが、平均的には2000時間~5000時間の勉強時間が必要とされます。
日本難関資格の司法書士の必要時間が3000時間、税理士は2500時間~5000時間と言われていることから不動産鑑定士の難易度というのがわかります。
ちなみに宅建の資格の場合は約100時間前後で合格をすることが可能になるので、不動産鑑定士は少し難しいと感じる方はまず宅建士の資格に挑戦をすることがおすすめです。
宅建資格の勉強をすることで、短答式の試験の「不動産に関する行政法規」と法令が重複する部分が多くあるので有効となります。
1日必要な勉強時間と期間
準備期間により異なりますが、仮に4000時間の勉強時間を確保したいと思う場合
1年感の準備期間で4000時間を達成せるためには毎日約11時間の勉強をする必要があり、あまり現実的ではないという結論になります。
仕事をしている方の場合、毎日2時間程度の勉強が現実的になるかと思います。
その場合約2000時間の勉強時間を確保するのに3年間という期間が必要です。4000時間欲しいという場合はその倍の時間を毎日勉強すればいいので3年間という期間を確保するなら約4時間がベースとなります。
そのため、自分は1日どれくらいの時間を勉強することができるのか、どれくらいの勉強時間を目指すのかを逆算してスケジュールをたてるといいでしょう。
試験の見直しの可能性
難易度が非常に高い不動産鑑定士の資格ではありますが、国土交通省から不動産鑑定評価懇談会では今後の方向性に関して取りまとめがされています。
1)不動産鑑定士試験における新たな免除制度の導入
不動産鑑定評価制度の今後の方向性(当面の方策に関する提言)の概要③
・論文式試験に不合格でも、一定以上の成績を得た科目については、一定期間受験を免
上記のように免除をすると発表がされています。
ただしこれは提言なのですぐに試験の内が変更されるといったものではありませんが、今後免除がされ合格がしやすくなる可能性があります。
不動産鑑定士試験合格者に対する実務修習は、不動産鑑定士となるために必要な技能及び高等の専門的
不動産鑑定士試験合格者に対する実務修習制度の見直し
応用能力の修得を目的として、不動産の鑑定評価に関する法律に基づき実施されています。
昨年6月に土地鑑定委員会が公表した「不動産鑑定士試験実施の改善について」では、近年の不動産鑑定士
試験の実施状況や不動産鑑定士に対する社会的要請の変化などに鑑み、学生等の若年層の方や不動産分野
での職務経験のない方にも積極的にチャレンジしてもらうため、試験について基本的な知識・理論及びその応用
能力を十分に身に付けていれば短期合格が可能となるよう見直しを行うとともに、試験合格後の実務修習等に
ついて充実を図り、不動産鑑定士の資質の維持・向上に努めていくこととされました。
これを踏まえ、国土交通省及び公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会(実務修習機関)において実務
修習制度の見直しに関する検討を行い、今年度(12月からを予定)より、不動産の鑑定評価の実務に関する講義
(以下「講義」という。)におけるeラーニングの導入、講義・基本演習・実地演習の各課程の履修内容等の見直し、
修了考査の見直しなどを実施することとしましたので、お知らせします。
実務修習制度の見直しに関する内容及びスケジュールについては、日本不動産鑑定士協会連合会ホームページ
にてご覧いただけます。
その他にも上記のように短期間で合格が可能になるように見直しを行うという提言もされているので、今後の動向にもチェックしていきましょう。
不動産鑑定士が難しすぎるという声
不動産鑑定士を受けた人で難しいという声を最後にまとめておきます。
試験に含まれてる不動産鑑定士…の内容が難しすぎるw これは確かに独学で10年かかる理由だわ。
— おでん☆ (@0dennkunn) September 28, 2017
独学で試験に挑むことが難しいといわれる不動産鑑定士の試験内容を見た方のコメントになります。
うぃちゅん不動産鑑定士は難しすぎるから宅地建物主任者をまず頑張ってみようかなって思ってる どっちにしろ難しいけど
— 下村うぃ (@marumariumu) April 4, 2015
不動産鑑定士は難しいので他の資格から受験をしてみるというのも良い手段ですね。
不動産鑑定士向いてるかもよ?って言われて詳細を調べていたら、難易度がトップクラスで今は無理そうって確信した
— bokuru (@bokuru87) June 19, 2017
論理記述の欄の説明が難しすぎる
不動産鑑定士に向いていても、試験が難しすぎるという問題は拭いきれませんね。
一般人向け不動産国家資格とは
— ニゼック(まいど舞香) (@nizeckk) October 8, 2020
A.宅地建物取引士(宅建)
B.マンション管理士(マン管)
C.管理業務主任者(管業)
の三つを言います。
B>A>Cの順に難しいです。
「一般人向け」と書いたのは不動産鑑定士があるからで、これは別格で難しい資格です。
相当な覚悟がないと不動産鑑定士の資格を取得するのは難しいという声です。
とりあえず不動産関連の資格を取得したいという人は宅地見物取引士やマンション管理士の資格を検討してもいいかもしれません。
まとめ
今回は取得するのが最も難しいといわれる、三大国家試験の一つである動産鑑定士について紹介をさせていただきました。
取得することで不動産の開業などに役立つシーンも多くある資格にはなるので
本気で取り組みたいと思う人はぜひ頑張ってみてください。